「はかま」とよばれる赤い部分にはにおい成分がぎっしり
『北の大地の行者にんにく』につかわれる行者ニンニクは、北海道で古くから親しまれてきた野草です。旬はたったの3週間ほど。かつてアイヌの人びとがプクサやキトピロとよび、栄養源としてだけでなく魔除けにもつかったといいます。
「生えているところは誰にも教えないね。とる人にはそれぞれ自分だけの秘密の場所があるんだ」と話すのは、行者ニンニクの採り子を束ねる親方、髙田さんです。
山中の、ひとつ間違えば谷に落ちそうな細いデコボコ道を車で走ること30分。足がすくむほどの急斜面の下に群生地はありました。採り子さんたちが慣れた足どりで降りていき、手ばやくカマで切りとります。「辛いけどうまいよ」と髙田さんに渡されかじってみると……水分と甘みがジュワッと口に広がり、噛んでいくうちにネギのような辛みが。しばらくするとノドのあたりがぽかぽかしてきました。極寒の北海道で重宝されてきた理由はこれなのですね!
かつて、冬山にこもった修行僧(行者)が厳しい修行を乗り切るために食べたといわれる行者ニンニク。先人たちから受け継がれてきた滋養あふれる野草は収穫後、新鮮なうちに冷凍。そして『北の大地の行者にんにく』へと生まれかわるのです。
経験豊富でなければ踏み入るのは危険な場所に生える
採り子さん自家製の醤油漬けは味が染みこみご飯が進む味